当院の特色

間質性肺炎・肺線維症センター 


1.間質性肺炎・肺線維症センター紹介

 間質性肺炎は100を超える原因があるといわれていますが、中でも特発性肺線維症 (IPF)は本邦では特定疾患に指定されている難病であるため、専門医による適切な診断と治療が求められます。しかしながら、そのような専門性の高い病院・施設および医師は、大都市部に集中しているため、地方医療においてより専門性の高い診療提供は困難を極めます。そのため、開業医や総合病院の専門外の先生方が、間質性肺炎診療に携わらなければならないのが現状です。そこで2018年1月より、福島県初の間質性肺炎・肺線維症センターを開設し、東邦大学医療センター大森病院呼吸器内科(間質性肺炎センター)と連携を取りつつ、大学の水準と同等の医療を提供できるように日々努めています。特にセンター化することにより、間質性肺炎患者さんが入院精査あるいは治療を受ける際に、スタッフが共通の認識のもと無駄なく適切な診療に当たれるようになり、一番の成果と感じております。


2.間質性肺炎とは?

 肺は空気の通り道である気道とガス交換(血液に酸素を取り込む一方で,二酸化炭素を放出する)を行う肺胞から成っていて、肺胞の中を実質、肺胞の壁を間質と呼んでいます。間質性肺炎は、原因不明(医学的には特発性と呼ぶ)あるいは100種類を超えるさまざまな原因から肺の間質が厚く硬くなり(線維化)、ガス交換(酸素を取り込み,二酸化炭素を排出する)がうまくできなくなる病気です(図1)。間質性肺炎の危険因子として、加齢と喫煙、遺伝的素因が挙げられますが、その他、原因が明らかなものとして、関節に炎症が生じて変形が起こる関節リウマチや特徴的な皮膚症状と筋肉痛を主症状とする多発筋炎・皮膚筋炎などの膠原病(自己免疫性疾患)、抗癌薬、漢方薬、消炎鎮痛薬などのアレルギー反応による薬剤性、ほこりやカビ・鳥の分泌物・羽毛などを慢性的に吸入することによりアレルギー反応が生じ引き起こされる過敏性肺炎、職業上、アスベストやシリカなどの粉塵を吸入することにより生じるじん肺、放射線照射やサルコイドーシスといった肉芽腫性疾患でも見られます。一方、原因を特定できない間質性肺炎は「特発性間質性肺炎」と呼ばれており、現在、6つの主要な特発性間質性肺炎、2つの稀な特発性間質性肺炎、分類不能の特発性間質性肺炎の9型に分類され、患者さんの約半数は「特発性肺線維症idiopathic pulmonary fibrosis; IPF」と診断されます。

図1

3.間質性肺炎を疑うポイント

 初診時の詳細な問診に加えて、胸部画像所見の特徴や経時的な画像所見の推移は、鑑別診断および治療介入のタイミング等を知る上で大変有用な情報となります。そこで、当センターでは、外来診察前の待ち時間を利用して、患者さんにオリジナルの問診票(図2)の記載をお願いしています。

図2

 また、ご紹介先の病院、先生方には過去の胸部レントゲン写真やCTを送っていただくようにお願いをさせてもらっています。一般に間質性肺炎を疑うポイントとして、乾いた咳(空咳)や坂道や階段、平地歩行中や入浴・排便などの日常生活の動作の中で感じる息切れ(労作時呼吸困難)などの呼吸器症状、胸部聴診上、特に背下部で吸気終末時の捻髪音 (fine crackles)を聴取、ばち指の存在(図3)などが認められ、胸部CTでは蜂巣肺と呼ばれるような典型的な輪状陰影が肺底部の胸膜下優位に分布し、進行とともに肺の容積は減少します(図4)。呼吸機能検査では、肺活量の低下、酸素を取り込む能力の低下、労作時の低酸素状態などが挙げられます。

図3 図4

4.専門外来へ紹介するタイミング

 間質性肺炎が疑われた場合は、まずその中でも頻度が最も高く、治療抵抗性で予後不良であるIPFを鑑別することが重要となります。また、最終診断の精度を高めるには、間質性肺炎の診断に精通した臨床医、放射線画像診断医、病理医による集学的検討が重要とされている点や、間質性肺炎の進行が予測できないだけでなく、時に急速に悪化し致死的な状況に至ることもあります(図5)。したがって、上記のような自・他覚所見、検査所見が認められた際は、できるだけ速やかに専門医に相談、紹介するべきです。

図5

5.間質性肺炎の診断と治療

 先にも触れたように、間質性肺炎が疑われた場合は、予後の点および治療内容を決定する上でもIPF(特発性肺線維症)とそれ以外の間質性肺炎を鑑別することが重要なポイントです。 IPFに対しては、現在、ステロイド,免疫抑制剤は推奨されておらず、抗線維化剤であるニンテダニブ(オフェブ®),ピルフェニドン(ピレスパ®)が第一選択薬です。診断していく過程で、適応と必要性が高い場合は、外科的肺生検(腹腔鏡下肺生検)を行うこともあります。
 明らかな自覚症状もなく無治療の安定期の間質性肺炎の患者では、3〜6ヶ月毎の経過観察とします。但し、薬物治療及び在宅酸素療法が必要な間質性肺炎患者においては、原則1〜2ヶ月毎の外来受診が必要であり、上述の無治療経過観察の患者と共に6ヶ月毎の重度評価(表1)、効果判定を行うべきです。6ヶ月の経過観察中に5〜10%以上のFVC料の低下を認めた場合は、積極的な治療が必要と考えます。本邦では、IPFの難病医療助成制度により認定基準を満たせば、高価な抗線維化薬を使用する際も高額医療費の軽減が可能になります。一方、非薬物療法として、酸素療法、呼吸リハビリテーションも適応患者に導入するべきと考えられます。

表1

6.当センターの特色

 間質性肺炎が疑われた場合は、予後の点および治療内容を決定する上でもIPF(間質性肺炎)とそれ以外の間質性肺炎を鑑別することが必要で、中でも問診は最も重要なポイントとなります。当センターでは外来診察前に専用の問診票の記入をしてもらっています(図6)。

図6

 また、該当患者には3泊4日の入院をお願いし、迅速かつ詳細な間質性肺炎の精査を行っています(図7)。

図7

 診断していく過程で、適応と必要性が高い場合は、外科的肺生検(胸腔鏡下肺生検)を行うこともあり、実際、当センターでは、この1年半年間で約40名の患者に間質性肺炎の診断目的で外科的肺生検を受けていただきました。さらに最終診断は、間質性肺炎を専門とする臨床・病理・放射線科医による総合的判断 (multidisciplinary discussion; MDD)が必要とされており、定期的に施設外の専門の先生方を招聘して、院内でMDDを実施しています。
 治療においては、特にIPFと診断された場合、重症例はもとより、これまでの研究で予後不良例と考えられる比較的軽症例においても抗線維化剤であるニンテダニブ(オフェブ®)、ピルフェニドン(ピレスパ®)を積極的に導入しています。また、リハビリテーション科との密な連携を取りながら、酸素療法、呼吸リハビリテーションも適応患者に併用しています。過去約15年間の東邦大学大森病院と坪井病院での在宅酸素療法(HOT)の導入疾患別割合は、間質性肺炎が約30%を占めており、多くの患者が適切なタイミングで導入されています(図8)。

図8

 さらに間質性肺炎患者は安静時の約3倍の酸素流量が必要と考えられます。  膠原病や肺高血圧症の合併が疑われる患者は、近隣の総合病院の膠原病内科および循環器内科に紹介し、診察および検査(右心カテーテル検査)を迅速に対応していただいています。このように同一施設内で不可能な診療も、それぞれの特色を持った郡山市内の基幹病院との連携をとることにより、当センターでも間質性肺炎診療を可能に致しました。


7.当センターの実績

 坪井病院赴任後に行った市民公開講座や郡山市内外での講演会、近隣病院への当センター開設のご案内など、多くの方々のご協力により現在、週に2-3名程度の新規の間質性肺炎患者をご紹介していただけるようになりました。その結果、2017年5月から2019年4月までに郡山市内外から228名を超える間質性肺炎の新規患者が当センターに来院されました。疾患別内訳としては、特発性肺線維症患者が46%と最も多く、希少疾患といわれるような肺胞蛋白症や難治性気道疾患(びまん性汎細気管支炎,閉塞性細気管支炎)なども紹介されています(図9)。

図9

 本邦では、特発性肺線維症の難病医療費助成制度により認定基準を満たせば、高価な抗線維化薬を使用する際も高額医療費の軽減が可能となるため、積極的な申請を行っています。また、紹介元エリア別では、郡山市内が約半数を占めるものの、市外あるいは県外からも多くの患者を紹介していただいております(図10)。

図10

 この場をお借りして感謝申し上げるとともに、その責務の大きさを感じており身の引き締まる思いで日々の臨床を行っております。
 間質性肺炎の診療は、リスクとベネフィットを考慮した個別化医療(テーラーメイド医療)が必要不可欠であるため、より専門性の高い知識と豊富な経験が求められます。今後も当センターでは、間質性肺炎患者に適切な診断と治療が提供できるように努力してまいります。


8.スタッフの紹介

 間質性肺炎・肺線維症センターは医師2名、看護師3名、理学療法士1名、作業療法士1名、薬剤師2名、歯科衛生士1名、ソーシャルワーカー1名から構成されており、当院では間質性肺炎患者さんが精査あるいは治療目的で入院されると、各部署の専任担当者を中心に一連の業務に当たり、迅速かつ適切な診療を可能にしています。

間質性肺炎・肺線維症センター長 杉野 圭史
医師 小野 紘貴
看護師 遠田 典子、熊谷 幸枝、佐藤 望
理学療法士 馬上 修一
作業療法士 須藤 美和
薬剤師 橋 紗英子、関根 悠
歯科衛生士 本内 陽子
ソーシャルワーカー 星 美加

9.担当医師紹介

杉野 圭史
履歴:
1999年3月  東邦大学医学部医学科卒業後,同付属大森病院にて研修
2004年10月  国家公務員共済組合連合会虎の門病院呼吸器内科に出向
2007年4月  東邦大学大学院医学研究科博士課程入学
2011年3月  東邦大学大学院医学研究科博士課程修了,博士(医学)(東邦大学甲第417号)
2011年4月  東邦大学医学部医学科助教(内科学講座呼吸器内科学分野)
2013年4月  東邦大学医学部医学科講師(内科学講座呼吸器内科学分野)
同年より,イギリス(ロンドン)ロイヤルブロンプトン病院放射線科に留学
2014年4月  東邦大学医学部医学科講師(内科学講座呼吸器内科学分野)
2017年4月  一般財団法人慈山会医学研究所付属 坪井病院
2018年1月  同 間質性肺炎・肺線維症センター長

所属学会:日本内科学会、日本呼吸器学会、日本呼吸器内視鏡学会、日本呼吸ケア・リハビリテーション学会、日本感染症学会、日本肺癌学会
American Thoracic Society;ATS、European Respiratory Society;ERS、
Asian Thoracic Society of Respirology;APSR

資格: 日本内科学会認定内科認定医・専門医、日本呼吸器学会呼吸器内科専門医・指導医、
気管支鏡専門医、日本感染症学会専門医、日本呼吸ケア・リハビリテーション学会代議員、
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会評議員


10..当センターの業績

2017年
【論文】


【著書】


【学会・研究会(国内)】


【学会・研究会(海外)】


【講演会・座長】



2018年
【論文】


【著書】


【学会・研究会(国内)】


【学会・研究会(海外)】


【講演会・座長】


謝辞:
 末筆ではありますが、現在のMDDカンファレンスを支えていただいております国立病院機構東京病院臨床検査科センター長の蛇澤 晶先生,公益財団法人結核予防会複十字病院放射線診断科部長の黒崎 敦子先生に心より感謝申し上げます。