当院の特色

間質性肺炎専門外来


1.間質性肺炎とは?

 肺は空気の通り道である気道とガス交換(血液に酸素を取り込む一方で、二酸化炭素を放出する)を行う肺胞から成っていて、肺胞の中を実質、肺胞の壁を間質と呼んでいます。間質性肺炎は、さまざまな原因から肺の間質が厚く硬くなり(線維化)、ガス交換がうまくできなくなる病気です(図1)。間質性肺炎の危険因子として、加齢と喫煙、遺伝的素因が挙げられますが、その他、原因が明らかなものとして、関節に炎症が生じて変形が起こる関節リウマチや特徴的な皮膚症状と筋肉痛を主症状とする多発筋炎・皮膚筋炎などの膠原病、抗癌薬、漢方薬、消炎鎮痛薬などのアレルギー反応による薬剤性、ほこりやカビ・鳥の分泌物・羽毛などを慢性的に吸入することによりアレルギー反応が生じ引き起こされる慢性過敏性肺炎、職業上、アスベストなどの粉塵を吸入することにより生じるじん肺、放射線照射やサルコイドーシスといった肉芽腫性疾患でも見られます。一方、原因を特定できない間質性肺炎は「特発性間質性肺炎」と呼ばれており、現在、6つの主要な特発性間質性肺炎、2つの稀な特発性間質性肺炎、分類不能の特発性間質性肺炎の9型に分類され、患者さんの約半数は「特発性肺線維症idiopathic pulmonary fibrosis; IPF」と診断されます。

図1
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2.間質性肺炎を疑うポイント

 初診時の詳細な問診に加えて、胸部画像所見の特徴や経時的な画像所見の推移は、鑑別診断および治療介入のタイミング等を知る上で大変有用な情報となります。一般に間質性肺炎を疑うポイントとして、乾いた咳(空咳)や坂道や階段、平地歩行中や入浴・排便などの日常生活の動作の中で感じる息切れ(労作時呼吸困難)などの呼吸器症状、胸部聴診上、特に背下部で吸気終末時の捻髪音 (fine crackles)を聴取、ばち指の存在(図2)、胸部画像検査上、両肺びまん性に間質性陰影(胸部X線は、胸部CTに比べて病変の分布、肺容積減少などの継時的変化を的確に捉えることができるため、X線、CTの両方を施行するべきである)(図3)、呼吸機能検査上、拘束性換気障害および拡散能低下、労作時酸素分圧低下(酸素飽和度低下)などが挙げられます。検査の中でも胸部高分解能CT (high resolution computed tomography; HRCT)は、わずかな早期間質性肺病変も捉えることができ、さらに肺全体の病変分布を把握することができるため、間質性肺炎の診断上必須の検査です。

図2 図3
図2 図3

3.専門外来へ紹介するタイミング

 間質性肺炎が疑われた場合は、まずその中でも頻度が最も高く、治療抵抗性で予後不良であるIPFを鑑別することが重要となります。また、最終診断の精度を高めるには、間質性肺炎の診断に精通した臨床医、放射線画像診断医、病理医による集学的検討が重要とされている点や、一部の間質性肺炎は、特発性(原因不明)、二次性(何らかの原因がある)を問わず、進行性あるいは急速に悪化し致死的な状況に至るため、上記のような自・他覚所見、検査所見が認められた際は、できるだけ速やかに専門医に相談、紹介するべきです。


4.間質性肺炎の診断と治療

 先にも触れたように、間質性肺炎が疑われた場合は、予後の点および治療内容を決定する上でもIPFとそれ以外の間質性肺炎を鑑別することが重要なポイントです。IPF患者では現在、ステロイド、免疫抑制剤は推奨されておらず、抗線維化剤であるニンテダニブ(オフェブ®)、ピルフェニドン(ピレスパ®)が第一選択薬です。診断していく過程で、適応と必要性が高い場合は、外科的肺生検(胸腔鏡下肺生検)を行うこともあります。
 明らかな自覚症状もなく無治療の安定期の間質性肺炎の患者では、3〜6ヶ月毎の経過観察とします。但し、薬物治療および在宅酸素療法が必要な間質性肺炎患者においては、原則1〜2ヶ月毎の外来受診が必要であり、上述の無治療経過観察の患者と共に6ヶ月毎の重症度評価(表1)、効果判定を行うべきです。6ヶ月間の経過観察中に5〜10%以上のFVC量の低下を認めた場合は、積極的な治療が必要と考えます。本邦では、IPFの難病医療費助成制度により認定基準を満たせば、高価な抗線維化薬を使用する際も高額医療費の軽減が可能になります。一方、非薬物療法として、酸素療法、呼吸リハビリテーションも適応患者には導入するべきと考えられます。また、間質性肺炎、特にIPF患者においては、経過中に肺高血圧症、原発性肺癌、急性増悪等を合併することが多く、注意が必要です。


表1
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