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子宮頸がんの治療成績

子宮頸がんについて

 子宮頸がんは子宮の入り口付近に出来るがんです。近年、多くの子宮頸がんでヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Virus, HPV)が関与していることが明らかになりました。HPVは性行為によって感染する(うつる)ので、性活動の活発な20〜30才代の女性に急増しています。 20才になったら是非、毎回の子宮がん検診を受けましょう。

 子宮頸がんは、通常、異形成や上皮内がんといった子宮頸部上皮内腫瘍を経て発症します。これは、病変が子宮頸部の表面つまり上皮という部分から発生します。上皮に病変がとどまっている状態が上皮内腫瘍です。上皮内がんはやがて子宮の表面から深部(間質といいます)に侵入を始めます。これを浸潤とよびます。この浸潤がわずかに起きた状態を微小浸潤がん(進行期Ia期)とよびます。この段階までであれば子宮の頸部を切り取る円錐切除という方法でほぼ100%治癒しますし、子宮を残すことが可能でその後妊娠、出産にも問題はありません。ただし、この段階ではほとんど症状はありませんので、検診で発見することが大切です。
 がんがさらに子宮の深部にはいり込むと顕性浸潤がん(進行期Ib)という状態になります。この段階では一般的に子宮を残すことは難しく、再発や転移の可能性も出てきます。手術も一般に子宮を取るのみでなく、子宮周囲のリンパ節も含めて摘出する必要があります。がんが子宮を超えて拡がるとII期とよばれる状態になります。手術のみでなく、放射線治療や抗がん剤の追加治療が必要になります。がんが膣の下部1/3まで拡がったり、腰の骨近くまで広がるとIII期とよばれ、手術は不可能になります。放射線治療や抗がん剤による腫瘍縮小、消失を目指します。子宮の前に存在する膀胱や子宮の後ろに存在する直腸に及ぶとIVa期という状態となり人工肛門や、尿路変更が必要となることもあり、生活の質(Quarity of life, QOL)が低下します。腰の骨の高さを超えてがんが拡がると遠隔転移とよばれIVb期という状態になります。 III,IV期の子宮頸がんは治癒が困難で、再発の可能性も高くなります。(図1)

図1:子宮頸がんの臨床進行期

坪井病院の治療成績

 このようにIb期以上の子宮頸がんは治療前に拡がりを確認して手術、放射線、抗がん剤治療を組み合わせて、治療法を選択する必要があります。今回は、高度な手術手技、抗がん剤や放射線治療に関する知識や経験が必要とされる Ib期以上の子宮頸がんの当院での治療成績を紹介します。

 当院の2002〜2006年のIb期以上の子宮がんの患者さんの年令をみると図2のように30〜40歳代の方が多く 65%を占めています。子宮頸がんが20〜30歳から発生し、数年を経てIb期以上に進んだことがうかがえます。 20歳代からの検診の重要性が再認識されます。

図2:坪井病院でのIb期以上の子宮頸がんの年代別症例数

 子宮頸がんは治療開始前の拡がりの診断で治療法が選択されます。 図3、4に当院での進行期別の治療成績を示します。 Kaplan-Myer曲線といって、縦軸に生存率、横軸に時間経過を示しています。右に行っても高い生存率を維持していいれば治療成績はよく、右肩下がりに生存率が低下する群の治療成績は芳しくないといえます。 Ib期では多くの人が治癒しII〜IV期と比較して治療成績は良好です。(図3)
 また、 III,IV期といった進行例、手術不能例はIb,II期と比較して死亡例が多いといえます。(図4)


進行期別

図3:坪井病院での子宮頸がんの進行期別の治療成績(Ib期vsII〜IV期)

図4:坪井病院での子宮頸がんの進行期別の治療成績(Ib,II期vsIII,IV期)

 一方、子宮頸がんの治療前の進行期は、おもに子宮の病変で判断され、リンパ節転移の有無などの危険因子が含まれていません。子宮の病変は大きくてもリンパ節転移がなかった例は手術で治癒し、子宮の病変は小さくても手術時にリンパ節転移があった例は再発が少なからずみられます。 図5にリンパ節転移や遠隔転移の有無別の生存率を示します。リンパ節転移、遠隔転移をもたない例は、持っていた例より生存率が高い傾向があります。


転移の有無別

図5:坪井病院での子宮頸がんの転移の有無別の治療成績

 もう一つの子宮頸がんの危険因子として組織型があります。これは顕微鏡でがんの形態をみてきめられます。子宮頸がんの多くは皮膚や食道などと同じく扁平上皮がんという型で放射線が比較的良く効くタイプです。 10〜20%の子宮頸がんは腺がんとよばれ、胃や腸のがんと似た型を示します。このタイプのがんは子宮頸部腺がんとよばれ、

1) 若い人に多い。
2) 早期発見が難しい。
3) 放射線や抗がん剤が効くことが少ない。

 などの理由で治療が難しいがんといわれています。当院での子宮頸がんのこの組織型別の生存率を図6に示します。当院では子宮頸部腺がんの生存率が、扁平上皮がんに比して極めて悪いといったデータはみられませんでした。これは、Ib〜II期といった比較的早期の頚部腺がんが多く、広汎子宮全摘や術後抗がん剤治療といった適切な治療で治癒する子宮頸部腺がん例が多いことによるといえます。


組織型別

図6:坪井病院での子宮頸がんの組織型別の治療成績

まとめ

 最後に、子宮頸がんの治療については、多くの選択肢があり、知識と経験が必要です。子宮頸がんに行われる広汎子宮全摘術は筋腫などで行われる術式より複雑で高度な技量が必要です。当院では年間15例前後の広汎子宮全摘を行っています。また、近年では若くして子宮頸がんになり、子宮温存を望む方には広汎頸部切除術という方法で子宮の温存も可能となり当院でも対応しています。また、従来の放射線療法に加え抗がん剤を同時併用することで治療成績が向上するといわれ、放射線抗がん剤同時併用も行っています。また、手術困難例への抗がん剤による腫瘍縮小をはかり手術可能とする術前化学療法(Neoadjuvant chemotherapy, NAC)や、手術後の放射線や抗がん剤の追加療法、子宮腔内に装置を入れての腔内照射など多様な治療法を実施しています。婦人科腫瘍専門医のいる当院での子宮頸がんの診断や治療をお勧めします。