1986年から2001年までの16年間(内視鏡治療例は、1993年から2000年まで8年間の集計)に、坪井病院で治療した大腸癌の症例は、1,205例でした。
その内訳は、
以下、内視鏡治療と開腹手術について述べます。
癌は、大腸の最も内側の層、粘膜層(図1)から発生し、徐々に、大腸の壁深く進んで行き、小さな血管や、リンパ管から流れ出し、転移します。
しかし、粘膜層に留まっているうちは、転移がありませんので、大腸の内側から、内視鏡で切除可能です。
粘膜下層にある程度進むと、転移が生じますが、治療成績が良好なので、両者を合わせて早期大腸癌と呼んでいます。
図2、図3は、当施設の粘膜内癌(m癌)と粘膜下層浸潤癌(sm癌)の治療結果です。
粘膜内癌では、内視鏡で治療できないほど大きなものが、粘膜下層癌では、リンパ節転移の可能性のあるものが、それぞれ手術になっています。
体に負担の少ない内視鏡で、治療を終了することが、治療を受けられる方にも、治療をする側にとって最も望ましいと考えています。
不完全な内視鏡治療は、病状の悪化に繋がります。治療の際には、大腸を専門とする内視鏡学会認定医、または、専門医にご相談下さい。
粘膜下層より深く進んだ例には、開腹手術を行いました。手術例の年齢は、18〜97歳で、平均年齢は、63歳でした。男女比は、1.29:1で、男性が56.4%でした。
進行の程度をDukes分類で表し、当施設の治療成績を述べます。
Dukes Aは、図1の粘膜層、粘膜下層、および(固有)筋層までに癌がとどまり、かつ、リンパ節転移のない例で、228例。
Dukes Bは、それ以上進んでいるのですが、リンパ節転移のない例で、210例でした。
Dukes Cは、癌の深さに関係なく、リンパ節転移を伴う例で、244例でした。また、Dukes Dとしましたのは、肺や肝臓などの大腸以外の臓器に転移がある例で、87例です。
5年生存率、10年生存率は、それぞれDukes A 97.2%、94.3%。Dukes B 85.1%、82.0%。Dukes C 70.6%、56.0%でした。Dukes D の2年生存率は、15%ですが、最近では、転移巣の積極的な治療により、長期間生存例を認めます(図4)。
参考:大腸癌取扱い規約【第6版】による当施設の病期別治療成績
進行程度 | 5年生存率 | 10年生存率 |
---|---|---|
0 | 100% | 100% |
I | 97.1 | 97.1 |
II | 87.7 | 81.5 |
III a | 79.9 | 66.2 |
III b | 59.3 | 39.7 |
IV | 7.2 | 0 |
手術後に経験した合併症の主なものは、縫合不全(腸の縫った場所が不完全)3.2%、手術後の腸閉塞 5.7%、創部の感染 7.8%でした。
豊富な早期大腸癌治療経験から、独自のデーターに基づいた、より侵襲の少ない治療が選択可能。
高度進行大腸癌に対する抗癌剤治療を含む、集学的治療が確立していること。