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肺がんの手術成績

 坪井病院にて1977年7月〜2003年3月の26年間に手術を行った症例は761例(ほぼ同数が非手術例として入院治療を受けている)であり、手術に関連する死亡は18例(2.4%)あり、そのほとんどは進行がんに対する拡大合併手術後の合併症によるものでした。


性別・年齢別

性別・年齢別(2003年3月末現在)
年齢 男性 女性 合計
〜40 7 5 12
41〜50 29 24 53
51〜60 105 62 167
61〜70 243 90 333
71〜 143 53 196
合計 527 234 761

  • 性別は男性・527例、女性・234例、年齢は18〜82歳、平均64.0歳でありました。
  • 40歳以下は男性・7例、女性・5例、合計12例であり、41歳〜50歳は男性・29例、女性・24例、合計53例であり、50歳以下が全体の8.5%でありました。61〜70歳が最も多く、43.8%をしめていました。

組織(種類)型別

組織型(2003年3月末現在)
組織型 男性 女性 合計
扁平上皮がん 254 19 273
腺がん 192 196 388
大細胞がん 23 2 25
小細胞がん 12 3 15
その他のがん 46 14 60
合計 527 234 761

  • 喫煙との因果関係の強い扁平上皮がんは273例、小細胞がんは15例でした。
  • 喫煙との関係が乏しく、誘因(原因)がまだ明らかでない腺がんが男性192例、女性196例、合計388例が全体の51.0%を占めている現実を注目してください。

喫煙指数と組織型

喫煙指数と組織型(2003年3月末現在)
性別 喫煙指数 扁平上皮がん 腺がん
男性 0 18 34
<600 36 46
≧600 194 108
女性 0 12 180
<600 2 13
≧600 4 3

  • 喫煙指数とは、1日に吸うタバコの本数X喫煙年数を指します。乗じた値が600未満と以上で肺がんの罹患率に大きな差がみられます。喫煙と関係のある代表の扁平上皮がんと非喫煙者にも多い腺がんを喫煙指数と性別で表にしてみました。
  • 扁平上皮がんにおいては、喫煙者は男女(特に男性)とも相関がみられますが、指数がゼロの男性18例、女性12例は間接(受動)喫煙の可能性があると思います。
  • 腺がんにおいては、男性で相関がみられますが、全国の男性の喫煙率が高いため、なんともいえません。ここで注目して欲しいのは、非喫煙者の女性に腺がんが180例と最も多いことです。この事実に関しては『肺がんの話』をご覧ください。

 次に、手術後の成績(生存の確認し得た約700例を対象)などをグラフでお示しいたします。なお、それぞれのグラフに関する詳しい数値は、こちらをご覧ください。


全症例

このグラフは、全症例の手術後の生存曲線です。

がんの進行度別などのグラフは後でお示しいたします。
5年生存率は46.9%(ほぼ2人に1人が生存する)、10年生存率は33.6%、平均生存期間は7.67年でありました。

詳しい数値は、こちらをご覧ください。


発見動機

このグラフは、受診した理由の3分類別の生存曲線です。

検診群はほとんど無症状で、集団、個別(施設)、職域、ドックなどです。他疾患群は高血圧や心臓病などで通院中、胸部X線写真を撮り発見されたなどです。有症状群は主に呼吸器症状(咳・痰・胸痛、風邪など)で受診したなどです。

5年生存率は検診・52.2%、他疾患・51.1%、有症状・37.4%で、検診群と他疾患群は有症状群に比し、統計的に有意差がみられました。
つまり、症状を生じてから受診しては良好な結果が得られ難く、無症状での検診や他疾患での発見が良いということになります。

但し、検診などで"異常なし"と言われてもこれはあくまでもこれから1年間の保証であり、3,4年後に受診して"進行がん"であった例を数多く経験しています。是非、逐年(毎年)受診されることをお勧めします。

詳しい数値は、こちらをご覧ください。


手術後の病期(進行度)

このグラフは皆様が特に関心のある病期による生存曲線です。

病期とは腫瘍の大きさ、リンパ節への転移の有無、他臓器への転移の有無の3者をそれぞれに組み合わせたものです。 T期(a,b)、U期(a,b)、V期(a,b)とW期に分類され、T期は早期がん、U期は準早期(中間)、VとW期は進行がんであり、( )の亜型は、aよりbの方が進んでいると考えてください。

病期別の5年生存率は、Ta期・74.8%、Tb期・61.4%、Ua期・36.1%、Ub期・38.0,Va期26.3%、Vb期・7.2%、W期は5生率はなく3生率のみで7.2%でありました。
病期の進行度が生存率に明確に反映しているのがお分かりいただけると思います。

詳しい数値は、こちらをご覧ください。


組織型

肺がんは組織学的には、非小細胞がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、腺扁平上皮がん)と小細胞がんの2つに分類されます。

このグラフは組織型別の生存曲線です。
平均生存期間では、腺扁平上皮がん・2.98年、小細胞がん・4.18年であり、症例数の多い腺がん・8.27年、扁平上皮がん・6.83年などに比し、悪い傾向にあります。

小細胞がんは、他に比し進行が速いがんです。幸い、化学療法や放射線療法が他のがんに比し効果があるため、手術の対象になる症例はごく限られています。

その他のがんの平均生存期間は、7.89年と腺がんに次いで良好ですが、その多くは悪性度が低く発育のゆっくりしたがんが多いためです。

詳しい数値は、こちらをご覧ください。


腫瘍径

このグラフは腫瘍径(がんの大きさ)別の生存曲線です。

当院ではそれの大きさを、1)1cm以下、2)1.1〜1.5cm、3)1.6〜2.0cm、4)2.1〜3.0cm、5)3.1〜5.0cm、6)5,1cm以上の5段階に分類しております。

5年生存率は、1)・76.4%、2)72.5%、3)・62.7%、4)・57.8%、5)35.4%、6)31.0%であり、 腫瘍の大きさが生存率に明確に反映しているのがお分かりいただけると思います。

最近は検診やCT検査の普及により、小型(2cm以下の大きさ)の肺がんが見つかるようになりました。

詳しい数値は、こちらをご覧ください。


N(リンパ節)因子

肺がんの手術の標準の術式は、肺の切除とリンパ節の郭清(切除)を行います。その郭清は局所及び中枢(気管支の中枢や左右の気管支の分岐部)を主に行っています。それについて手術後に病理学的に転移の有り無しを検索します。

N0はすべてに転移がみられない、N1は局所に転移がある、N2は中枢にも転移がある、N3は反対側にまで転移あるものとしてグラフをご覧になってください。 前記の腫瘍径別の1.6〜2.0cmでも約20%前後にリンパ節に転移がみられました。

5年生存率は、N0・62.6%、N1・28.8%、N2・20.0%であり、N3では3生率しかなく18.3%でした。
リンパ節の転移の有無も予後を決定する重要な因子であります。

詳しい数値は、こちらをご覧ください。


腺がん(リンパ節転移なし・腫瘍径別)

特に最近は増加傾向にある腺がんの別な生存曲線をお示しいたします。

腺がんの多くは無症状のことが多く、胸部X線写真やCT検査で発見され易く、非喫煙者の女性に多いがんです。
予後は腫瘍径とリンパ節の転移の有無に左右されます。幸いリンパ節に転移が無かった症例でも腫瘍径のみで差があるのも事実です。

グラフは、リンパ節に転移のなかった症例の腫瘍径を2.0cm以下と2.0cmを越えるものとを比較した生存曲線です。

5年生存率は、2.0cm以下の群・86.8%、2.0cmを越える群・64.6%で両者に有意差がみられました。
曲線をご覧になってお分かりいただけると思います。

詳しい数値は、こちらをご覧ください。


手術法

一般的に手術法は前述の病期に付随するものです。
葉切(片肺の1/2または1/3を切除する)が標準術式です。他の臓器(胸膜、心膜、肋骨、横隔膜など)への直接浸潤の進行がん(多くは扁平上皮がん)に対してはそれを合併切除する拡大手術がなされ、一方、小型の早期がんに対しては部切(がんを含め肺を部分的に切除、縮小手術)や区切(区域で切除、部切より大きめに切除、縮小切除の1つ)を行う傾向にあります。
また、腫瘍の部位によっては片方の肺を全て切除する全摘手術もあります。

当然のことながら、全摘や拡大手術後の予後は標準の葉切よりも不良であることはお分かりいただけると思います。
ただ、縮小手術としての区切の成績が当院では不良の部類に属していますが、多くは条件の悪い(肺機能が悪いなど)症例に消極的に行ったためであり、今後は手術の適応などに一考を要すると考えています。

詳しい数値は、こちらをご覧ください。


肺がん手術々式の変遷

過去15年間における術式の比率の推移をグラフにしてみました。

当初は拡大手術が多くありましたが、最近は、拡大手術は減少傾向にあり、逆に縮小手術(部切と区切)が増加してきています。これは、有症状の進行肺がんが減少し、前記のごとく小型がんが増加していることにほかありません。

開胸(到達)は、従来は約25cm前後の皮膚切開創にて肋骨切除(1〜2本)をする(強度の肋間神経痛などの後遺症が多くありました)方法でしたが、現在は12cm前後の皮膚切開創で肋骨を切除しない(痛みが少ない)法に変わってきております。
また、症例によっては胸腔鏡(内視鏡)を用いてより小さな切開創で手術を行う場合もあります。


 以上、当院における肺がんの手術成績を提示してまいりました。個々の場合、それぞれを当てはめてください。治療をお受けになる際のご参考になれば幸いです。
 なお、より詳しいデータをお知りになりたい場合はいつでもご連絡ください。お待ちしております。

岩波 洋