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卵巣がんの治療成績

卵巣がんについて

 卵巣は子宮の左右に、母子頭大の臓器として存在し、卵子の排出や女性ホルモンの分泌に働いています。腹腔内に存在するため、卵巣がんができても出血やおりものなどの症状が出ることが少なく、発見時には病変が広がっていたということが多く、早期発見や治療が困難ながんです。特に進行卵巣がんの治療は難しく、世界中で効果的な治療法補が模索されていますが、まだまだ満足できるものではありません。


坪井病院の治療成績

進行期別

 卵巣がんの治療成績を最も左右するのが進行期で図1に示します。がんが卵巣にとどまっている状態をIa、Ib期といいます。卵巣にがんがとどまっていても腹腔内にがん細胞がこぼれている(腹腔細胞診陽性といいます)状態をIc期といいます。がんが卵巣を超えて拡がるが骨盤内にとどまる状態をII期といいます。がんが骨盤を超えて腹腔内に拡がったり、リンパ節に転移するとIII期となります。横隔膜を超えてがんが転移したり、肝臓に転移するとIV期になります。 図2に当院での卵巣がんの進行期別の治療成績を示します。 Kaplan-Myer曲線といって、縦軸に生存率、横軸に時間経過を示しています。右に行っても高い生存率を維持していいれば治療成績はよく、右肩下がりに生存率が低下する群の治療成績は芳しくないといえます。 Ia,Ib期の生存率は100%ですが、Ic,II期になると少なからず再発、死亡例がみあられます。 III,IV期の治療成績は極めて不良で多くの方が2〜3年で命を落とされています。このように進行期は卵巣がんの治療成績にきわめて重要な因子です。但しこの集計結果は実際の治療成績、一般的な治療成績と比較すると見かけ上少し悪く見えます。これは2002年から当院の調査統計部が発足し、システムに変更がありました。そのため、2006年までで5年以上充分に経過観察された例が少ないことによります。今後数年で一般的な治療成績と同等かそれ以上になると思われます。

図1:卵巣がんの臨床進行期

図2:坪井病院での卵巣がんの進行期別の治療成績

組織型別

 次に、卵巣がんの治療成績に影響する因子として組織型というものがあります。顕微鏡で見た卵巣がんの形を4つの型(組織型)に分類しています。漿液性腺がん、類内膜腺がん、明細胞腺がん、粘液性腺がんの4つです。これは、抗がん剤の効果を予測する要因になります。漿液性腺がんと類内膜腺がんは一般に抗がん剤がよく効く感受性のタイプ、明細胞腺がん、粘液性腺がんは抗がん剤が効きにくい抵抗性のタイプといわれます。当院の治療成績では、両者に明らかな差は見られませんが、明細胞腺がん、粘液性腺がんのIII,IV期の進行例では、漿液性腺がん、類内膜腺がんと比較して、急激に生存率が低下する傾向がみられ、難治性であることが伺えます。勿論、抵抗性の型だから全く効かないというわけではなく、また最近では抵抗性型に効果のある抗がん剤の組み合わせの開発が試みられています。

図3:坪井病院での卵巣がんの組織型別の治療成績

卵巣がんの治療

 卵巣がんの治療にあたっては、手術で病巣の拡がりを充分に把握すること(進行期の決定)と、可能な限り腫瘍を摘出すること(残存腫瘍の減量)が大切です。腫瘍の組織型を確認するとともに、出来るだけ体内に残る腫瘍の大きさを小さくすることでその後の抗がん剤の効果を高めます。さらに、卵巣がんの治療には抗がん剤治療が手術とともにかくことのできない重要な治療法です。適切な抗がん剤を選択して効果の判定を行ってゆくことが必要です。卵巣がんの抗がん剤治療については、世界中で研究が続けられており日進月歩です。従来の標準治療といわれたTC療法(パクリタキセルとカルボプラチンという2種の抗がん剤の組み合わせ)も最新の研究では、投与方法を工夫することでより高い効果が得られるといった報告もあります。また、分子標的治療薬という従来の抗がん剤とは全く異なる治療薬も開発され、bevacizmab(商品名アバスチン)という薬物が、卵巣がんに効果があるという報告が米国からあります。我が国では未承認ですが、当院でも使用した経験があります。


まとめ

 卵巣がんの治療にあたっては、熟練した手術手技と抗がん剤治療に関する充分な知見が必要です。不幸にして再発された場合、抗がん剤治療のみならず人工肛門や尿路変更といった手術が必要になることもあります。緩和治療も必要となります。当院では様々な卵巣がん患者さん、特に治療に難渋されるような患者さんにも、最適な医療を提供してゆけると存じております。