当院の特色

呼吸リハビリテーション

 呼吸リハビリテーションについてお話しします。慢性呼吸器疾患の中でCOPDは呼吸リハビリテーションのよい適応になります。呼吸リハビリテーションの目的は肺疾患の進展の阻止、残された呼吸機能の効果的な活用。衰えた体力と気力の改善と向上。家庭生活、社会生活への復帰とその持続にあります。

T.肺理学療法のスタッフの構成

 肺理学療法は、対象となる患者さんを中心に、医師、理学療法士・作業療法士、呼吸療法士、看護師、薬剤師、栄養士、ケースワーカーなどで構成されるチームにより進められます。その中で、医師は全体の立案、指示および総合的な評価を行います。理学療法士は、理学療法の指導、実施にあたります。呼吸療法士は、吸入療法、運動療法の指導などを担当、看護師は病床での肺理学療法の介助および実施にあたります。薬剤師は服薬や吸入の指導に当たります。現在COPDは全身疾患とされており、栄養士の役割も重要です。ケースワーカーは、患者さんの社会復帰に際して、職場との調整、福祉問題の援助および指導を行います。

呼吸リハビリテーションの構成委員 坪井病院呼吸リハビリテーションスタッフ
坪井病院リハビリテーションセンター
U.呼吸練習

 腹式呼吸訓練が主体となる。基本的な手技を次に示します。
呼吸練習 @全身の筋肉の弛緩
 全身の筋肉の力を抜き、リラックスさせます。特に呼吸障害のある患者さんは、胸や肩の筋肉の緊張が強い患者さんが多く、肩の力を十分抜くようにします。具体的には、仰臥位で頭に小さい枕を当て、さらに膝の下にクッションなどを当てて、膝を軽く曲げた姿勢をとります。
A腹式呼吸
 全身の筋肉が弛緩した状態で腹式呼吸を開始します。はじめは背臥位から開始します。まず、胸部と腹部の動きを感じとるため片手を胸に、もう一方の手を腹の上に軽くのせ、胸部はあまり動かないように注意しながら、息を吸うときは腹が膨らみ、吐くと きは腹がへこむようにします。呼気時には口すぼめ呼吸を行い、呼気時の気道閉塞を防ぎます。腹の上に砂袋などの重量物(1〜2kg)をのせて腹式呼吸をすると行いやすいです。同じ要領で次は側臥位、座位、立位の練習へと進め、座位、立位での腹式呼吸が出来るようになったら歩行時、階段昇降時の練習へと進みます。

V.呼吸筋訓練
Threshold訓練器

 呼吸筋訓練は吸気筋訓練が主体であり、ThresholdTM訓練器を用います。この訓練器は吸気孔の一方弁をスプリングで押しつけることにより吸気抵抗が発生する器具であり、スプリングの強さを定量的に調節する事が可能です。
 呼吸筋力を評価する指標として呼吸筋の強さと耐久力が用いられるます。一般に、強さの測定には最大口腔圧(PImax,PEmax)が用いられ、また耐久力の指標としては、最大持続吸気圧:sustainable inspiratory pressure(SIP)が用いられます。吸気筋訓練の長期効果の結果では、呼吸筋の強さ、耐久力とも増加します。また6分間歩行試験の歩行距離も延長します。

W.運動療法
エアロバイクによる下枝運動療法

 運動療法は歩行、サイクルエルゴメーター、トレッドミルなど様々な方法を用いて行われます。肺気腫症の患者さんの多くは運動耐容能が限られているので、トレーニング実施中は持久力を高めることに重点を置きます。そうすることにより、患者さんは限られた身体条件の範囲内で、より効率的に身体を動かせるようになるのです。
 当院において私たちは腹式呼吸、上肢・下肢の運動訓練、吸気筋訓練を肺気腫症の患者さんについて行っています。坪井病院での呼吸リハビリテーションのプロトコールは次のようなものです。開始後直ちに腹式呼吸訓練ならびに呼吸体操、鉄アレイなどによる上肢訓練、病棟廊下を用いた歩行訓練を開始します。ただし、患者さんの状態によっては全部行うことが出来ない場合もありますので、その際は可能な限り、効果が出るように患者さん個々にメニューを作成しています。
 吸気筋訓練器具ThresholdTMを用いて、1回15分、1日2回の吸気筋訓練を開始します。また漸増運動負荷試験を行い、最大負荷量の60%の運動量でサイクルエルゴメーターによる下肢運動訓練を1回10分1日2回、開始します。このリハビリテーションにより、患者さんの呼吸筋力の改善、持久力、生活の質の改善がみられます。